設定にロマンがある
人類が初めて月に降り立ったアポロ計画。17号で打ち切りになったこの計画に続きがあったとたらという歴史改編モノのSF小説です。現代よりも積極的に宇宙開発を行っていたこの黄金時代がもし続いていたら?そんな妄想を宇宙開発ファンの誰しもが抱いていたはずですし、この小説ではその妄想が具現化されており、とてもロマンのある作品でした。
18号が打ち上げられる世界戦では、ソ連との宇宙開発競争より激化し軍事的な側面が大きくなっているという設定や、実在する人物が多数出てくるというストーリーにはとてもリアリティがありました。作者は実際の宇宙飛行士であるということもあってか、フィクションなのにもかかわらず現実味を帯びており、知識のある人が書いた現実のような歴史に胸が躍りました。
エンタメ性がある
タイトルに「殺人」とあるように、本書にはSFだけではなくミステリーやサスペンス、アクションなどのエンタメ性が盛り込まれています。友情や裏切り、嫉妬、葛藤、そして尊敬。ロケットという密室の中で渦巻く人間関係や、登場人物の過去など。手に汗握るその展開は、続きが気になってついつい読み進めてしまうほどのものでした。上下巻合わせて700ページ超えの大リュームでしたが大満足です。
アポロ計画をよく知らない人には難しい
僕は小学校時代、宇宙開発に興味を持つ少年でした。その時代にアポロ計画に関する図鑑などを数冊ですが食い入るように読んだ記憶があります。そのため本書で描写されている宇宙計画やロケットの世界観を頭で思い浮かべながら楽しむことができました。
しかしアポロ計画に親しみがない方がいきなり読むと活字からロケットや月着陸船、アポロ計画そのものを想像することしかできず、苦戦するのではと思いました。①でも言いましたがあくまで歴史改編モノなので、それを楽しめるのはその対象となるできごとについてある程度知っていることが必須となります。
もしアポロ計画を全然知らないという方がいましたら、映画「ファストマン」や「アポロ13号」を観て、アポロ計画について知った上で読むことをおすすめします。アポロ計画について知らない人がいきなり読むと楽しめないでしょう。