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宮部みゆき「さよならの儀式」を読んだ感想(SF小説/書評)

投稿日:2023年8月6日 更新日:

人の内面や人間関係の描写力がすごい

僕は宮部みゆきの小説を初めて読みました。日本を代表する小説家であることは知っていましたが、彼女が原作の映画「ソロモンの偽証」を過去に観たことがあるくらいで、彼女の文学とはほとんど接点がありませんでした。

そんな僕が今回、初めて読んで感じたのは「人の感情や関係の描写力がすごすぎる」です。正直ビビりました。登場人物が持つ喜怒哀楽や葛藤、そして人間関係が、リアリティと説得力を持って書かれており、こんな作家がいるのかと衝撃を受けたほどです。直前に読んでいた別のSF小説たちでは、ストーリーや展開に重きがおかれていましたが、本作では「人間」としっかり向き合っていました。

短編「母の法律」の旋律では、主人公が暖かい人間関係に恵まれたことや、どのような感情を抱えているのかが丁寧に描写されているからこそ、親近感を持って読むことができました。また短編「戦闘員」では老後の男性がどのような思考で突拍子もないな行動しているのかが、納得感を持てるように書かれており、将来の自分もこうなるかもしれないと思うまででした。

正直、日本の偉大な小説家の作品を多く読まれている方だと、読んでも特に新鮮さを感じないかもしれません。ですが普段小説を読まない方だと「人間の感情をここまで文字に起こせる人がいるのか」と衝撃を受けると思います。短編小説集で本を読む初心者の方にもとっつきやすいと思うのでオススメです。

ガッツリとしたSF小説を読みたい人には物足りないかも

これは①「人の内面や人間関係の描写力がすごい」の裏返しかもしれませんが、本作はガッツリとしたSF小説を読みたい人には物足りないと思われます。登場人物たちの内面や人間関係などに重きを置いて書かれている分、SF的な世界観の描写はすごく少ないです。例えば短編「星に願いを」に登場する宇宙人に関して、彼らが持つ文明や歴史に関する説明はなく、何を動力源とした宇宙船に乗っているかということも語られません。そのような世界観が細かく語られているからこそ楽しいと感じるSFファンにとって、本作は物足りないかもしれません。

ですがそれは逆にいえば、SFの初心者にとっての入門としてはぴったり小説であるともいえます。SFの科学的で長々しい文章は苦手だけど、ロボットや宇宙人、怪物、パラレルワールドが登場する小説は読みたい。そんな方にはオススメの一冊です。

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