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SF小説「SIGNAL シグナル」感想(ネタバレなし書評/山田宗樹)

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宇宙人との初接触がリアル

この小説の序盤で最も気に入ったのは、人類が宇宙人を見つけた経緯がリアルなこと。多くのSF作品では、人類はエイリアン本体と直接遭遇します。そのシーンがストーリーにおけるひとつの山場だったりするのですが、冷静に考えてみるとそのどれもがリアリティに欠けますよね。

いきなり宇宙人が空から降りてきて、人類と交流する(もしくは戦う)というのは私たちの日常では起こりそうにない(もちろん言い切れはしないし、だからこそロマンがあるのですが・・・)

本作では「人為的に作られた電波を偶然宇宙から傍受することで宇宙人の存在が明るみになる」という本当にありえそうな設定です。もちろん作品にリアリティばかりを求めている訳ではありませんが、僕らの生活で本当にこんな事が起こるかもと考えながら読むことができるワクワクは最高でした。

エイリアンの存在を知った人間社会のリアクションなどの描写(YouTuberがネタにする、みんな意外と興味を持たないなど)にも現実感があり、未来のドキュメンタリー作品を読むような経験ができて良かったです。特にいち学生の視点から初遭遇が語られるのも感情移入しやすくて、人間社会のおおきな歴史の転換点に立ち会ってる気分になれました。

途中で展開が大きく変わる

人類が宇宙人を見つけた経緯がリアルで、そこを気に入り読み進めたのですが途中で物語がガラッと変わります。
ネタバレしたくないので詳しくは書きませんが、ストーリーが科学的なものから少しカルト的なものに切り替わります。

個人的にファンタジー作品は得意ではないしこの作品に求めていたことはそれじゃなかったので、正直ガッカリしたし、大丈夫かこれ?と思いました。

ですが読み進めていく上で大きな問題にはなりませんでした。逆にそのカルト的なものに科学的な視点からどう対応するかという視点があり続けたので読み切ることができました。またカルトに振り切りすぎていなかったので安心です。

人間関係のシグナル

本作のタイトル「シグナル」はもちろん宇宙人から受け取った電波のことを指します。ですが同時に人間関係における相手の反応・リアクションとも意味が重ねられていると感じました。口数が極端に少ない先輩とフレンドリーな先輩という対象的なふたりとコミュニケーションを取る際に主人公が受け取るシグナルの数々。宇宙人とのシグナルが解明されるその時、人間関係も大きく動きます。

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